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親孝行2015.01.15 Thu

兄と結んだ秘密の約束(三浦智絵美)

こんにちは!
わが家の愛猫が大好きな、
インターン生の三浦智絵美です。

私には兄と、2人の姉がいます。4兄妹の末っ子として育ち、家族構成を言うと周囲からはよく
「たくさん可愛がられたでしょう」と言われます。
でも実際のところ、可愛がってもらった記憶はほとんど無くて、そう言われると返答に困ってしまうんです。(笑)
というのも、一番上の兄とは13歳差、次の姉とは11歳、その次の姉とは6歳の年の差があり、
皆それぞれ高校卒業とともに家を出てしまった為、一緒に過ごせた時間は少なかったのです。

特に兄に関しては、私が小学校にあがる年に専門学校へ進学し、そのタイミングで一人暮らしを始めてしまったので、
私の中で兄の記憶として残っているのは“サッカーを頑張っている”ということくらい。
当時4、5歳の私が見ていた、部活から疲れた様子で帰ってくる姿しか思い出せません。
アルバムを引っ張り出してくれば、遊んでもらっている写真はあるのですが、記憶には残ってないんですよね。
小さい頃は、たまに帰省する兄と「話したい」と思っても、緊張して自分から話しかけられなかったりして。遠い親戚のお兄さんみたいな存在でした。

お正月は、家族全員が集合する特別な日

それぞれの場所で暮らしている兄妹。唯一、全員揃って帰ってくるのが、大晦日の夜でした。
小学生の頃の私は、年に一度のこの日が待ち遠しくて仕方ありませんでした。
帰ってきた兄、姉たちには、一方的に自分の近況をぶわーっと話し、
「トランプしよう」だの「外で遊ぼう」だの言って、その日だけは存分に遊びに付き合ってもらっていた覚えがあります。
兄と話すときは相変わらず緊張はするものの、久しぶりに会えた喜びでいっぱいで、
何より家族全員で同じ空間に居られることが幸せでした。

しかし、兄姉は順々に社会人になり、仕事が忙しくなるうちに、だんだんとお正月に全員が揃うことは難しくなっていきます。
毎年恒例だったトランプも、外でのバドミントンもやらなくなりました。
唯一の家族全員での交流の場だった、お正月の大切な時間。少しずつ、賑やかさと特別感が失われてきたように思います。

だんだん生まれた兄への苦手意識と、素直になれない葛藤

私が高校生になった頃、兄の勤務先が実家から近くなり、兄は実家へ戻ってきました。仕事が忙しそうで、いつも帰りは深夜0時過ぎ。
毎日帰って来ているにも関わらず、会うのは週に2回程度。会っても挨拶を交わすくらいで、ゆっくり話をする時間はありません。
余裕が無いのか、気づけば兄は、私やほかの家族に指摘や命令ばかりするようになりました。

「部屋の掃除をちゃんとしろ」と、勉強が終わって一休みしてからやろうと考えていたところに口出ししてきたり、
「え、ご飯ないの?」と言って母にご飯を作らせたり。

相手の状況を考えずに、一方的な発言ばかりの兄にだんだんと苦手意識が芽生え、少しずつ距離を置くようになってしまいました。
強い嫌悪感、とまではいきませんが、
話をしたくなくて意識的に避けてしまいます。
そうして、もう5年ほど経ってしまうかもしれません。

でも、それでもちゃんと、小学生の頃の私が話す事を笑って聞いてくれた兄を知っているので、心のどこかで本当は優しい人だと信じたい気持ちもあります。
家族への指摘だって、みんなの為を想って言っているということも実は頭では理解しています。
正義感が強いが故に、より良くしようと行動して、空回りしてしまう事も多い不器用な兄と、私も良い関係を構築したいのが本音です。
つい避けがちになってしまう自分に、もどかしい想いでした。

今年のお正月は久しぶりに

今年は父、母、姉、私の4人で大晦日の夜を過ごしました。
全員は集まれませんでしたが、久しぶりに家族で過ごす時間は、やはり幸せでした。
そして今年は何年かぶりに、みんなでゲームをしようと提案をし、トランプや福笑いをして
昔みたいに賑やかな、笑いの絶えない時間を過ごせた事が嬉しかったです。

兄が帰ってきたのは3日の朝。元旦と2日は仕事だったといいます。
この日は、「みんなで外食に行こう」という話が出ていました。滅多に外食に行かない家なので、
母に「どうしたの?珍しいね」と言うと、「うん。なんかね、お兄ちゃんが誘ってくれたの」と、
少し不思議そうな表情を浮かべて言ったあとで、「お寿司がいいね」と嬉しそうに笑いました。
なかなか無い兄からの誘いに、母も喜んでいる様子でした。

お兄ちゃんが・・・珍しい。

しかし、兄は急に食事に行けなくなり、結局、両親と姉と私の4人で食事に行くことになりました。

出掛ける準備をしていると、私の部屋に兄が勢いよく入ってきました。
もちろん兄が部屋に来ることなんて滅多に無いので、突然何かと思い、

「えっ、どうしたの?」と少し引き気味に聞くと、兄は部屋のドアをそっと閉めながら
「ちょっと聞いて」と言い、小声で続けました。

「先月ね、仕事が好調で、これまででいちばん成績が良かったんだ。だからみんなにご馳走したくて食事に誘ったんだけど、急な仕事で行けなくなっちゃって。申し訳ないんだけど、お父さんとお母さんに楽しんでもらえるように、いろいろと細かい配慮をお願いしてもいい?家族の中でいちばん空気読むの上手だと思うから。よろしくね。じゃ、行ってきます!」

そう早口でしゃべり、急いで出ていきました。

私は驚きと、親心のような変な感動で、呆然としてしまいました。

家族への想いを表現するのが苦手なあの兄が、
そんな想いで食事に誘ってくれていた事、
私に、自分の想いを恥じらいなく話してくれた事、
それが嬉しくて、一気に心が熱くなりました。

「あ、あと!」
出た直後にバタバタと戻ってくると、
「お父さんお母さんから、お年玉もらった?」と言うので、
少し圧倒されながらも、「ううん、ない…」と答えると、
「じゃあ、今年は学生最後だから」と言って、封筒を手渡されました。
お年玉なんて両親からは毎年貰わないし、ましてや兄姉から貰う事はないので、一瞬戸惑いました。

「あ、お父さんとお母さんには内緒ね」
そう言って、兄はそそくさと部屋を出ていきました。

私の中では、もう色々な想いが入り混じってよく状況がわからなくなっていました。(笑)
「お兄ちゃんが優しく話しかけてきてくれた」という事だけでも感動なのに、私に家族への想いを話してくれるは、私を信頼してくれるは、内緒でお年玉をくれるはで、一気に兄の優しさに触れられた様な気がしました。
気づけば、「やられたな~」と心の中で悔しがりながらも、つい笑みが零れていました。

きっとお互いに、距離を縮めたいという想いはずっとあっても、なかなか素直になれずにいたんだと思います。
兄の方から行動を起こしてくれて、私は兄の想いを感じることが出来ましたが、以前までの、意識的に距離をあけてしまう状況が続いていたら、兄の本当の想いは分からなかったと思います。
想いは行動で、言葉で、形にしていく事が大切だということを、改めて教えてもらったような気がします。

兄にこんな想いにさせられるなんて少し悔しい気持ちですが、
私も自分の想いに素直になって、兄への感謝を形にして伝えていきたいと思います。

ちなみにこの出来事の後は、両親に兄とのやりとりを言いたくてたまらず、母に「どうしたの、ニヤニヤして」と言われながらも何とか黙っておきました。(笑)
兄との約束通り、両親へのもてなしを特に意識した食事会に、父も母もとても喜んでくれ、最高の1日を過ごす事が出来ました。

両親にも、兄との仲についてきっと気にかけてもらっているので、これからは私の姿を見て安心してもらいたいと思います。
まずは兄妹の絆を深める事から、私の親孝行を始めます。

いつも、なんだかんだ応援してくれているお兄ちゃんに感謝!
私は、本当は兄が大好きです。

orehana

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